· CEO Alex 経営戦略  · 8 min read

Google DeepMindが体制を刷新——「研究」と「実行」を分けた組織設計の狙い

Googleは2026年8月、Demis Hassabis氏がGoogle DeepMind会長兼Alphabet最高科学責任者に、Koray Kavukcuoglu氏が日常運営を担うSVPに就く体制変更を公表しました。Geminiアプリは月間9.5億人超。戦略の実行体制という観点から読み解きます。

Googleは2026年8月、Demis Hassabis氏がGoogle DeepMind会長兼Alphabet最高科学責任者に、Koray Kavukcuoglu氏が日常運営を担うSVPに就く体制変更を公表しました。Geminiアプリは月間9.5億人超。戦略の実行体制という観点から読み解きます。

※ 本記事は2026年8月25日時点の公開情報に基づきます。最新情報は各社公式発表等をご参照ください。

Googleは2026年8月、Alphabet CEOのSundar Pichai氏とGoogle DeepMind共同創業者のDemis Hassabis氏の連名で、AI部門の体制変更を公表しました。Hassabis氏はGoogle DeepMindの会長(Chair)兼Alphabetの最高科学責任者(Chief Scientist)に就き、Isomorphic Labsの指揮も継続します。日常運営は、Google DeepMindのCTOだったKoray Kavukcuoglu氏が、GoogleのChief AI Architectを兼務したままSenior Vice Presidentとして引き継ぎ、Geminiのモデル開発、フロンティアAI研究、Geminiアプリと開発者向けチームを統括してPichai氏に直接報告します。あわせて、27年間在籍したJeff Dean氏の退社も公表されました(出典: Google 公式ブログ)。

分けたのは「役職」ではなく「時間軸」

この変更を人事異動として読むと、要点を取り逃します。分割されたのは、長期の科学と短期の実行です。

Pichai氏はHassabis氏について、「彼と私は、AGIの未来を能動的に形づくることに彼が全力を注げる役割について、長く議論してきた」と述べています。Hassabis氏自身も「私たちは人類史の決定的な瞬間に到達した。私は生涯をかけてAGIに取り組んできたが、いま、多くの皆さんと同じように、それが手の届くところにあると感じている」と語っています(出典: 同上)。

一方で、モデル・アプリ・開発者という収益と普及に直結する3領域は、一人の執行責任者に集約されました。研究の射程を伸ばしながら、製品の意思決定は速める。両立が難しいこの2つを、同じ人に背負わせない設計です。

規模の数字が示す「実行側の重さ」

同じ発表には、実行側の規模を示す数字が置かれています。発表時点で、Geminiアプリの月間ユーザーは9.5億人超、オープンモデルのGemmaは累計9億回超のダウンロード(出典: 同上)。なお、Geminiアプリはその後の2026年8月11日に月間10億ユーザーを突破しています。

この規模になると、経営が扱う問題は「何を研究するか」から「どの順で出し、どこに投資し、どこを止めるか」に変わります。日々の判断の量そのものが、専任の執行責任者を必要とする水準に達したと読むのが自然です。組織を変えたから成長するのではなく、成長したから組織が変わったという順序です。

中小企業への翻訳——社長が持つべき2つの時間

規模はまったく違っても、構造は同じです。経営者が抱える仕事には、時間軸の異なる2種類があります。

  1. 今期の実行——受注、納品、資金繰り、採用。判断の頻度が高く、遅れが直接損失になる領域です。
  2. 数年後の仕込み——新規事業、技術選定、事業ポートフォリオ。判断の頻度は低いが、間違えると取り返しがつかない領域です。

多くの中小企業では、この2つを社長が一人で背負っています。結果として、目の前の実行に時間を取られ、仕込みは「時間ができたら」に回る。Googleの決定は、規模の頂点にいる企業でさえ、同一人物に両方を背負わせるのをやめたという事例です。

現実的な第一歩は、役員を増やすことではありません。今期の実行判断を任せる範囲を1つ決めて、書面で渡すこと。受注可否の金額基準、値引きの上限、採用の一次判断。どれか1つで構いません。渡した分だけ、仕込みの時間が戻ります。

まとめ

  • Googleは2026年8月、Demis Hassabis氏がGoogle DeepMind会長兼Alphabet最高科学責任者に就き、AGIと科学に集中する体制変更を公表した。Isomorphic Labsの指揮は継続する
  • 日常運営はKoray Kavukcuoglu氏がChief AI Architectを兼務したままSVPとして引き継ぎ、Geminiモデル開発・フロンティアAI研究・Geminiアプリ・開発者向けチームを統括し、Sundar Pichai氏に直接報告する。27年在籍のJeff Dean氏の退社も公表された
  • 発表ではGeminiアプリの月間ユーザー9.5億人超、Gemmaの累計ダウンロード9億回超という規模が示されている。実行判断の量が専任体制を要求する水準に達したことの裏返し
  • 中小企業への含意は「長期の構想と今期の実行を同じ人が背負い続けない」こと。実行判断の一部を基準つきで委譲するだけで、経営者の時間配分は変わる

体制変更のニュースは、他社の内部事情として読み流されがちです。ですがそこには、成長した組織が必ず直面する共通の課題が現れます。研究と実行、構想と納期。どちらも重要だからこそ、同じ人の同じ時間の中で競わせない。組織設計とは役職を並べることではなく、判断が滞る場所をあらかじめ外しておくことだと私たちは考えます。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。

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