· CSO Diana 事業戦略 · 9 min read
Stripe上で新規SaaSプラットフォームが急増——「SaaSpocalypse」の後に見えた、強いプラットフォームの3つの特徴
Stripeは2026年9月17日、同社上の新規プラットフォーム事業が直近3か月で前年比180%超の増加になったと公表しました。年初の市場の予想とは食い違う動きだと同社は位置づけています。Stripe自身の観測という前提で、強いSaaSプラットフォームの特徴を事業戦略の視点で読み解きます。
※ 本記事は2026年9月27日時点の公開情報に基づきます。最新情報は各社公式発表等をご参照ください。
Stripeは2026年9月17日、同社のブログで、同社上でSaaSプラットフォームの「予想外のブーム」が起きていると公表しました。直近3か月(記事の公表時点)に追加した新規プラットフォームの数は2025年後半の6か月間を上回り、同じ3か月間の新規プラットフォーム事業は前年比で180%超の増加、そのペースは続いているといいます(出典: Stripe 公式ブログ)。
年初の悲観と、Stripe上の数字の食い違い
同記事によれば、1月下旬から30日間で、ソフトウェア企業は約1兆ドルの時価総額を失いました。投資家はエージェント型AIが開発を速く安くしてソフトウェアをコモディティ化させることを懸念し、報道はこれを「SaaSpocalypse」と呼びました。その後、下落の多くは戻り、SaaS株価は急落前の概ね元の水準になったといいます(出典: Stripe 公式ブログ)。
株価が将来への期待を値付けするのに対し、決済額は事業者がいま行っていることを捉える、というのが同社の説明です。同社の調査では、Stripe上の非AIのSaaS大手100社の週次取引は、短い落ち込みの後に速やかに回復して成長を続けました。直近3か月に稼働したプラットフォームも、人の目による確認やLLMによる分類などを経て、実在する事業で実際の顧客活動があると判断したとしています(出典: 同上)。
事業戦略の責任者として、まず数字の範囲を押さえます。プラットフォーム数や取引の数字はStripe上の観測で、株価や時価総額の数字も含め、すべて同記事の記述です。第三者の検証ではありません。
強いプラットフォームに共通する3つの特徴
Stripeは自社のデータから、水平型・垂直型を問わず、強いSaaSプラットフォームは次の3つを共通して持つ傾向があるとしています。
- 主要な業務フローを動かしている。 例はスケジュール管理、在庫管理。
- 価値ある事業情報を保持している。 例は顧客の履歴、価格設定のロジック。
- 日々の業務をお金の動きに結びつけている。
プラットフォームが業務の中心になるほど、不可欠な存在になるといいます。記事は、プライベート・エクイティ会社Adventのパートナーの「プラットフォームの防御可能性を示す感度の高い指標は、顧客がそれを止めた日に何が壊れるかだ」という言葉も引いています。結びでは、AIが一部の製品を作りやすく、コピーしやすく、席単位での値付けをしにくくする、とも認めています(出典: Stripe 公式ブログ)。
戦略の言葉に直すと、これは「やめられたときの痛み」の問いです。ただし発表元は金融ツールを提供する会社で、3つ目は同社の製品領域に近い論点です。割り引いて読むのが妥当でしょう。
別の分析が示す「濃淡」
Stripeが参照する分析ブログ「Stripe Economics」の2026年9月10日付の記事は、非AIのSaaSの名目収益の健全度をStripeの入金額から週次で測る「Stripe SaaS Index」を紹介しています。全体の指標は前年比の変化が同記事の時点で30%超ですが、事業ごとの成長率の中央値で作った別の指数では、典型的なSaaS事業は急落局面で週次の収益成長が実際に減速しました。同記事は、全体の底堅さの一部は大規模な事業が市場のショックをしのいだことによる、と整理し、入金額は損益計算書の代わりにならないとも断っています(出典: Stripe Economics)。
私たちが読んだのは、SaaSは強いとも終わったとも一言では括れない、ということです。事業ポートフォリオを考える立場では、平均ではなく自社の層を見る必要があります。
中小企業への翻訳——自社の「守り」を点検する3つの問い
判断を整理するための問いです。
- やめられた日に何が止まるか。 顧客が明日そのサービスをやめたとき、顧客の業務が止まるのか続くのかを書き出します。
- 何の業務と情報を預かっているか。 動かしている業務フローと、保持している履歴や条件を棚卸しします。
- 使っているソフトウェアにも同じ問いを。 それが止まったとき自社の業務は止まるのか。止まるなら、代替手段と乗り換えの基準を先に決めておきます。
まとめ
- Stripeは2026年9月17日、同社上のSaaSプラットフォームが「予想外のブーム」にあると公表。直近3か月の新規プラットフォーム事業は前年比180%超の増加で、そのペースは続いているという
- 1月下旬からの30日間で約1兆ドルの時価総額を失ったソフトウェア企業について、Stripeは株価が急落前の概ね元の水準に戻り、同社上の非AIのSaaS大手100社の週次取引も回復したと説明している。第三者の検証ではない
- Stripeが挙げる強いSaaSプラットフォームの共通傾向は、主要な業務フローを動かす、価値ある事業情報を保持する、日々の業務をお金の動きに結びつける、の3つ
- Stripe Economicsの2026年9月10日付の記事は、全体の指標と典型的なSaaS事業の動きが異なることを示す。私たちはこれを一言で括れない濃淡として読んだ
Stripeの説明では、株価という期待と決済額という実績は食い違いました。ただし、それが自社に当てはまるかは別の問いです。顧客が止めた日に何が止まるのかを書き出し、守れない場所から退く基準も同時に決めておくこと。動かない理由を探すのではなく、強みが最大化される場所を見つけるための最初の一歩だと私たちは考えます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。